水産資源×漁獲の上限/存続可能性

2026-09-16

水産資源×漁獲の上限/存続可能性 図版1
水産資源×漁獲の上限/存続可能性 図版2

水産庁と水産研究・教育機構が9月2日に、マイワシ太平洋系群の今年度の資源評価を公表しました。

同じ1枚の表に、獲る強さを変えた5つの未来が並んでいます。そのうち「現状の漁獲圧」と書かれた行だけ、2036年に親魚量が目標管理基準値(143.2万トン)を上回る確率が0%になっていました。

2025年の漁獲は日本・中国・ロシアの3か国合計で91.1万トン、うち日本が55.9万トンです。一方、この資源から長期的に獲り続けられる量は47.0万トンと算定されています。持続できる量の、およそ2倍を獲った年でした。

獲った量とは別に、資料には「漁獲圧」という指標が出てきます。何トン獲ったかではなく、そこにいる資源に対してどれだけの強さで獲っているか。2025年の漁獲圧は、その47.0万トンを実現する漁獲圧(Fmsy)の4.43倍でした。

表には、その強さを弱めた場合の行も並んでいます。強さを調整する係数(β)ごとの、2036年に目標を上回る確率です。

・β1.0で30%
・0.9で37%
・0.8で45%
・0.7で54%
・現状のままで0%

分かりにくいのは、β1.0が「現状」ではないことです。資料の注に、直近の実績(2022〜2024年の平均)はβ2.29相当と書かれています。つまりβ1.0とは、その2022〜2024年の平均から見て半分以下に落とすということ。0.7なら3分の1近くまでです。そこまでやっても、10年後に目標へ戻る確率は54%。半々でした。

今年度に算定された2027年のABC(生物学的許容漁獲量)は16.2万トンで、現状の漁獲圧に対する比は0.39と書かれています。前年度の評価では、同じ2027年の算定値が70.9万トンでした。実際の漁獲量が1年で減ったのではなく、算定値が1年で4分の1以下になったということです。

理由は獲りすぎだけではないようです。同じ日に出た補足資料には、2018年以降、2歳以上の平均体重が急激に低下している、とあります。海水温の上昇で餌のプランクトンが減ったこと、海の生産力が落ちた状況では餌の奪い合いが強く働くこと。原因の候補はそう挙げられていて、結果として成長が遅くなり、産卵できる年齢が上がり、親が増えにくくなっている、と書かれています。

数が減っただけでなく、2歳以上の魚の平均体重が下がっている。減った理由と、増えにくい理由が、別々に書かれていました。

見通しを下げた要因のひとつには、「予測の置き方を変えたこと」も挙げられています。前年度は、近年は生まれた魚が多く残っていたという実績をある程度反映させた予測を使っていたのを、今年度は通常加入期(1988〜2024年)の親と子の関係に基づく予測に変えた、と。自分たちの見立てが外れた分まで説明したうえで、置き直しています。

東北大学の近藤倫生先生が、自然資本について話されていたことを思い出しました。資本というからには価値を生み出すもので、その増えていく分は利子にあたる。利子より多く使えば、資産は減っていく。そういう話でした。

自分の資産運用なら、利子より多く使えば目減りすることは想像がつきます。ただ自然資本は自分だけのものではなく、多くの人と共有している資本です。だから運用には、合意形成とルールづくりが要る。科学的に測り、その測り方自体を直していく約束事を、みんなで作り直し続けることが要る。

整える、つなぐ、活かす。環境情報化と呼んできたプロセスは、まさにこれなのだと、改めて思いました。

🔗 水産庁の報道発表(8種10資源の評価結果):
https://www.jfa.maff.go.jp/j/press/sigen/250829.html

🔗 資源評価の詳細版と手法のガイドライン(水産研究・教育機構):
https://www.fra.go.jp/shigen/fisheries_resources/meeting/stock_assessment_meeting/index.html